普段の日曜日は高田からの放送はお休みです。
でも、この3月11日は日曜日であっても放送を行うことは決まっていました。
しかし、陸前高田災害FMでは、特番というタイトルを付けることはできませんでした。
特番(特別番組)というジャンルでくくるということは、リスナーにとってもわかりやすいですし、送り出す側にもわかりやすい表現です。
それでも、私たちは特番…なにか特別な番組をやるのだということは考えられませんでした。
3月11日は、なんの区切りでもありません。翌日から何かが変わるわけでもない、と思いました。
高田の町々はずっと悲しみの中にあり、特別な一歩を踏み出している方はそんなに多くはないのだろうと思います。
ただ、この日を節目として、ここから頑張って歩き出さなければ…と自分に言い聞かせて頑張ろうと思っている方もいると思います。
心のままに。
どの道を選択しても、その人の生きる道です。
まだまだ頑張れない人はもう少しそのままで…。
頑張れる人はそれでも無理をしている…決して無理をせずに。
大きな被害があった陸前高田の町で、3月11日だから特別番組をやろうとは思いませんでした。
うまく言えないのですが、何か特別な日にしてしまいたくないという思いがありました。
私たちは3月11日という日でなくても、3月11日なのかもしれません…。
この日、私たちは送り出した番組は「戸羽市長からのメッセージ」。
そして、自衛隊の方々にお話を聞いた「シリーズ証言3.11 明日への絆 ~陸上自衛隊第5普通科連隊~」。
テレビを見れない方もいるかもしれない、式に参加できない方もいるかもしれない、車で移動中の人もいるだろうと、2時間半に渡り「県・市合同追悼式の生中継」も行いました。
そして、5人の学生が高田と支援についてを語る「若者のはなしかだりinTAKATA」。
米崎在住の音楽活動をしてる若者2人があの日とこれからを語る「まっととふっとの『今、伝えたいこと』」でした。
「追悼」と「感謝」と「これからの高田」。
この3つの思いを3月11日に届けようと選びました。
いつものように収録をして、いつものように送り出しました。特別なことはしていません。
でも、この日に向けて制作した若者番組2本を聴いてみて、作ってよかったと思いました。
これからの高田は若者たちが作り上げます。
高田は若者が少なくて、普段はあまりその声が聞けないような気がしていましたが、それでも若者たちはたくさんのことを考えていました。
こういった声を伝えていく場を彼らに提供するのも、大人たちの仕事であり、そして災害FMの使命であると感じます。
これら若者番組は、私たちが作ったのではありません。
彼らが自らの考えで語ったものであり、私たちは収録をしているだけでした。
でも、これらの番組を送り出せたこと、高田の若者を誇りに思いました。
皆さん、高田の若者は何もしてないわけではありません。
そのことを知っていただければと思います(この番組は今週土曜日に再放送します)。
今はちょっと少ないけど、若者たちはきっと明るい高田を築き上げると信じています。
そのためにも、私たち災害FMは多くの声を取り上げ、高田の復興のほんのわずか1ミリにでも貢献できればと思うのです。
なにか特別な日というものがあるのではなく、毎日、毎日の市民の皆さんの努力を日々伝えていけるように、と思います。
ただ、それでも、やはり3月11日のサイレンは特別でした。
あの瞬間、心にいくつかの思いや誓いといったものが自然と湧き上がってきたように思います。
やはり、3月11日は特別な日だったのかな・・・。
少しずつでも、みんなでがんばっぺね。
ディレクター:ISSE